4月12日 読了
「仕事から逃げたいとか、何かを成し遂げたいとか思ったわけではない。私はただ、ロバと共にもう一度、自分の知らない土地を自由に歩き回ってみたかった。」
「ロバのスーコと旅をする」 高田晃太郎 はじめに より
現在、日本に帰国しロバ旅を続けているという太郎丸@taromar_u さんのご本。
以前バズった、「メスロバに振られたオスロバの悲痛な鳴き声」の動画を上げられたご本人の著書です。
ざっと著者情報を引用させていただきます。
「1989年京都府生まれ。北海道大学文学部卒業。北海道新聞、十勝毎日新聞の記者を経て、スペイン巡礼で歩く旅の自由さに触れる。モロッコの遊牧民にロバの扱い方を教わった後、イラン、トルコ、モロッコでロバと旅をする。「太郎丸」名義でその様子をツイッターに投稿し一躍話題に。モロッコからの帰国後、日本国内でもロバとの旅を始める。」
とのこと。
京都ご出身だったんですね。イメージと合わないな…。
イラン🇮🇷、トルコ🇹🇷、モロッコ🇲🇦の3カ国の旅の思い出が記されています。
この3カ国とも、イスラム教が盛んに信仰されている国です。モロッコは、都市部だとまた違う様ですが。
ロバという我々日本人は普段関わらない動物と、まだまだ日本人には理解されていないイスラム教の国を旅する…
それだけで私はなんだかドキドキしてしまいます
どんな人たちがいるのだろう、どう関わっていくのだろう、ロバ達は一体どうなった?
楽しみのドキドキよりも、正直、不安のドキドキですね。
異文化と聞くと、ワクワクする人間もいるのでしょうが、不安でドキドキする人間もいます。
私は後者ですね。臆病なんです。
分かり合えない人達だったらどうしよう、こちらの事を理解してくれなかったらどうしよう、いきなり拒絶されたらどうしよう、と私なら怖気付いてしまいます。それに、不安なのはロバ達についてです。
人間世界において、それ以外の動物はみんな、人間よりも下に位置し、時に使役されて、時に食べられ、時に殺されます。
深い山の中、ろくな装備もない状態で熊に出会ったなら、出会った人間が熊に対して不適切な行動を取れば、その人間は熊に殺されます。しかし、その後、熊に1人の人間が殺されたのを知った人間達は、その熊を殺しにいくでしょう。
私は田舎出身田舎在住なので、熊の恐ろしさは十分知っています。「くまちゃん殺さないで仲良くしよっ」的なお花畑を主張する気は一切ないですが、まあ、熊に論理性とかがあれば「理不尽」と訴えられても仕方がないでしょう。
人間社会の中にいる動物なら尚更です。
その動物をどう扱うかも人間達の思うがまま。その動物は、それをただ受け入れるよりなく、自分の望みを主張もできません。残酷な扱われ方をしたらどうしよう、日本にロバを連れてくるのは大変だろうから、きっとイランとかトルコとかモロッコにまたいるのだろうけど、少なくとも、この本の著者はロバに優しく接してくれるだろうか
そう思いながら、手に取った本でした。
結論から言いますと、ロバとの関わりは、グレー寄りのホワイトでした。
グレー、が入っているのは、まあ、最初の方を読んだ方なら分かるでしょう。でも、少なくとも高田さん…太郎丸さん?は、決して悪い人間ではない、むしろいい人。けれども、人間は時折間違える。とはいえその事をしっかり反省なされている。
なので、私はこの本を最後まで読んで、太郎丸さんを嫌いになることはありませんでした。
なので、外野の私からこの事に言及するのは以上にします。
全て読んで、百聞は一見にしかず、という言葉が私の中に浮かんできました。
ロバの旅を通じて、太郎丸さんは様々な経験をします。ロバの購入をはじめとして、親切にされたり、人種差別に晒されたり、強盗に遭ったり、でもまた、優しくされたり。
太郎丸さんに関わってきた人間達は、皆、等身大の人間達でした。
今時ロバ連れの外国人を揶揄う人たち。
この先は危ないと忠告する人たち。
自分たちの国を、よく思って欲しいと願う人たち。
家に招待してくれた人たち。
自分達の国の偉人を知っている外国人に、嬉しくなったり。
自分達の役割に、一生懸命だったり。
ある人には親切なのに、違う人にはとても、冷酷だったり。
全て、私もよく知る、人間達でした。
私は、読んでいく中で不安のドキドキが、どんどん無くなっていくのを感じていました。
人間は誰しも聖人君子ではありません。善性もあれば悪性もまたあります。それが、普通の人間です。それは、誰にでも当てはまる、当たり前の事でした。
個人的にツボだった箇所は、モロッコでテント張りの許可に近所の家に行ったら、太郎丸さんが強盗と間違えられて所ですかね…
いやお互い冗談じゃなかったのでしょうが、「カーチャン強い!」と笑ってしまいました。いやガチ強盗の危険があるからの反応だったのはその、分かるんですけど。
全体的に、読んで良かった本です。
特に、太郎丸さんが旅をしてきた国の人たちに、是非読んでほしい本でした。
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